ライフサイエンス企業情報プラットフォーム

医薬品事業の未来を創る AIソリューション展
特別対談 Part3インタビュー記事

  • HOME
  • 医薬品事業の未来を創る AIソリューション展「特別対談」Part3 インタビュー記事

  

「AI×ライフサイエンス ~製薬事業の未来を考える~

 

Part3:製薬企業は「今」何をすべきか

AIに仕事を奪われる人、AIを使いこなし価値を生む人
製薬事業のAI活用と近未来のビジョンを語ってきた本対談。最終回となるPart3では、企業、組織、そして個人がAI時代を生き抜くために「今、何をすべきか」に焦点を当てます。
AIによる業務効率化が進む中、「人の仕事はなくなるのか」「専門職の人材育成はどうなるのか」という、経営層・現場双方の最も大きな懸念に対し、FRONTEOの成田周平氏とシーエムプラスの鴫原毅が本質的な解を提示し、AI導入を単なるシステム投資ではなく、「人材育成費」として捉え直す組織マインドセットの変革を提言します。

 


Part3:製薬企業は「今」何をすべきか

鴫原:3番目のパートに入りたいと思います。近未来の姿に関して話しましたけれども、それに向かって今我々が企業としても個人としても何をすべきかということを伺いたいと思います。

スキルアップを求める個人と、学びを提供する企業
鴫原:先ほどから、人材、AIをどう使うかという話もしましたが、やはりもう「今やるべきこと」というのは人材育成、組織的なマインドセットに尽きるんでしょうか?

成田氏:そうですね。会社、企業としてどう存在していくかというところで、やはり人は欠かせない問題です。
特に採用、新卒採用や中途採用も今は人手不足の状況です。そうなってくると、どんな企業だと皆さんが働きたいかというところを考えてみると、一般的な話になりますが、ネームバリューだけで企業に入るわけではなく、やはり働きながら自分のスキルを身につけていく、スキルがアップしていくような働き方を求められる傾向にあると思います。

今求められてる人材は、自分でしっかり成長できたり、会社で働きながらちゃんと成長できるということに満足感を見出します。圧倒的にAIを使う方が学びは深く、気づきも多いわけですから、今までのコンベンショナルな働き方で満足されている方もいるかと思うんですが、今後、企業としてどんな人材が必要か、どんな人材が働きたいと思うのかということにフォーカスした時には、AIの活用というのは外せないと思います。いわゆる人材育成もそうですが、評価といったところにもAIは関わってくるコンテンツの1つだと思います。

先ほどAIに取って代わるというお話がありましたが、実際にBtoB企業で、社内の業務をAIに全部置き換えた結果どうなるか、人がいらなくなりました。でも、クライアントから見ると、そのシステムを使えば自分の会社がいらなくなるということが起きるんです。そういった内容の仕事は淘汰されて、そういう企業はいらなくなるということもあり得ると思いますが、世の中にどう価値を提供するかは、やっぱり人でないとできない。そこに対してのやりがいを持って何かをやる、そこの補助をするのがAIという風に考えると、AIを使った企業と使わない企業の未来というのは、明らかに違う未来が描かれると思います。

鴫原:個人個人の人材育成も大事ですし、今の採用の話も大事な話なんですが、組織全体のマインドセットとして、もうAIデジタルはそこにある。これからも進化もしてくるし、多様なAIが出てきている。その進化を把握し、それを使いこなす。ただし、AIは完璧ではないので過信はしない。
うまく使いこなすという発想で、AIをツールとして使うという発想を変えて、AIがそこにあるんだという組織的なマインドセットが必要だと感じています。その組織全体のマインドセットを変えるには何が必要だと思いますか?

AIに「ルール」を教えることが、人の仕事を見直す契機に
成田氏:そうですね。AIがどんどん進出してきて、おそらく皆さんも気づかずAIを使っているケースもあると思います。AIを意識せずに使えれば一番いい。AIが人の代わりになっていると考えれば、ボディがないだけで、そことどう付き合うかは慣れの部分もあるかと思いますので、どう使っていくかというところがひとつの課題かなと思っています。
ただ、組織としてAIとどう向き合っていけばいいかというところは、やはりAIに仕事をさせるためには、ルールをしっかり教えなきゃいけないというところが当然あります。どういうルールで仕事をしているのか、そこが意外に人だけでやってるところはルールが曖昧だったり、ルールが決まっていなかったというのも実際にあると思います。
だから、AIを使うというきっかけをもとに、じゃあ自分たちの仕事って本当は何をしなきゃいけないんだろうと見直す契機にもなりますし、実際にAIに教えるためには、ルールをなんとなく「こうだよね」と言っていたものを明確にルールを決めていかなければいけない。

特に日本企業は日本人同士のコミュニケーションの曖昧さや、空気を読むといったところがよいところではあるけれども、AIを活用するとなったらどちらかというと欧米的なジョブディスクリプション(職務記述書)にしっかり従った仕事のさせ方が必要です。
製薬業界はその辺りが他の業界に比べて、どちらかというとはっきりしている。やることも決まってますし、法規制もあるしガイドラインもあるという中でお仕事されていると思うので、意外にその辺りはルールを決めやすい領域なのかなと思っています。
その辺りは自分たちの仕事をもう一度見直すという機会と捉えれば、AIを導入するというのはいい機会だと思います。

実際に私たちも何を支援しているかというと、そこをもう一度見直しして、AIに教えるためにはルールがなかったらルールを一緒に作りましょうという話をさせていただくことも多いです。
そこが実は、AIのPoC(Proof of concept:概念実証)をやっているわけではなく、人のトレーニングも一緒にやっているということにつながっています。その意識を持ち、業務をきちんと考えたりルールを決めたりということが人にとってのスキルアップにつながるというところだと思います。AIの性能を確認するPoCでは、そこに関わっている人たちがルールに従って動いているかも評価できることになるので人材育成とAIの導入というのは、完全にオーバーラップしていくような認識が、今後はポイントになってくると思っています。

鴫原:人に投資をするのと同じように、AIに投資をするということですね。

成田氏:はい、その通りですね。
ここはもうシステムの投資ではなく、あくまでも人材育成費、教育費というカテゴリーで投資をしていく。じゃあそこって、「新卒の人を何人採るの?」というのと、「AIをどれぐらいの割合にするの?」というのは多分同じ考えになってくると思います。
AIにある程度仕事を任せるとAIは24時間、夜中でも動けますから、そういうことをさせていきながら、人がどう効率的に仕事をするか、そのAIによって得られるものを使ってどうスキルアップするかという、いわゆる人材育成のデザインの中に、AIが入っていれば導入しやすく、さらに価値高く使っていただけるんじゃないかなと思います。

特に製薬業界は、他の業界に比べてかなり規制も厳しいですし、ドキュメントもしっかり残っています。バリデーションという考え方を明示して、当局に提出しなきゃいけないような環境もありますので、そういう意味ではAIをより活用するフィールドとしては非常に揃っている。あとはそのお金をどう捻出するかというところが1つのキーワードになってくると思います。そういう考え方をしていただければ、より使っていくことのきっかけにもなるかなと考えています。

鴫原:今日はいろいろなお話をいただきまして、AIについて、私も聞いてる皆さんも新しい発想が生まれてくれば、今日の対談が今後の業務に貢献できるかなと思います。本当に今日はありがとうございました。

成田氏:ありがとうございました。

 


 Part1:現状認識 ~ AIが変える製薬事業の「今」~

Part1 インタビュー記事をご覧になりたい方はこちら >>


  Part2:ビジョン ~ AIが拓く「近未来」の製薬事業の姿 ~

Part2 インタビュー記事をご覧になりたい方はこちら >>


 

Youtube動画をご覧になりたい方はこちら >>

【登壇者】

成田 周平 氏
株式会社FRONTEO
KIBITソリューション統括部KIBITソリューション推進部
ジネスエンジニアリングチーム 担当部長/カスタマーサクセス担当

2000年に現・シミックファーマサイエンス株式会社入社。理化学分析、微生物・細胞を用いた分析、バイオ医薬品分析に従事。2018年にシミックホールディングス株式会社へ転籍し、初期段階の医薬品開発支援を中心とした事業開発に尽力。現在は株式会社FRONTEO KIBITソリューション統括部にて、医療業界担当のAIコンサルタント・カスタマーサクセスとしてご活躍。自社開発AI「KIBIT」を活用した製薬・医療業界向けソリューションの導入から運用までを幅広くサポートし、企業におけるAIの最適な活用を推進している。
 

鴫原 毅
株式会社シーエムプラス シニアコンサルタント
1978年に第一製薬(現 第一三共)株式会社に入社。以来約30年にわたり、米国および中国駐在、ファインケミカル子会社での海外販売も含め、主に海外事業を担当。第一三共ではアジアおよび中南米地域事業、欧米導出品目の収入責任者、その後、第一三共中国の董事長・総経理などを歴任し、医薬品国際事業に幅広い経験を持つ。2012年から2018年までは、日本製薬工業協会国際部長として、欧米地域やグローバルヘルスに関する国際的な業界課題対応に尽力した。現在は株式会社シーエムプラスの提携コンサルタントとして活動している。